企業が求める能力

(2)企業が求めるシステムアナリストの能力について

ここでは顧客である企業がシステムアナリストにどのような能力を求めているかについて説明します。

システムアナリストに求められる能力は、実は時代によって異なっています。10年前であれば、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング~業務プロセス再設計)を伴ったERPパッケージの導入支援や汎用機からクライアント/サーバ型システムへの移行支援などがトレンドでした。現在であれば、「業務のあるべき姿」に基づく情報戦略の策定、経営統合によるシステム再設計、業務の「見える化」を実現する情報戦略の策定などが挙げられるでしょう。今後はいわゆる日本版SOX法(注)の施行を背景とした内部統制、ITガバナンスなどがトレンドになってくると思われます。これは後で述べますが、システム監査とも密接に関連してきます。

(注)日本版SOX法・・・日本版企業改革法の俗称。詳細は下記URLのサイトをご参照ください
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/jsox.html

ただ、上記の例は、大企業主体の最新トレンドの話であって、時代の影響をあまり受けないテーマも存在します。生産現場における在庫最適化や、顧客満足と競争力強化を目的としたシステムの導入などです。これらは中小企業ではまだまだ立ち後れていますので、引き続きシステムアナリストが取り上げていかなければならないテーマでしょう。

システムアナリストは、多くの場合、あまり情報システムに詳しくない顧客企業の経営層トップと会談して経営戦略をヒアリングし、これを実効あるものにするために最善の情報戦略を策定する能力が求められます。ここで言う「最善」とは、「費用対効果」と同義にとらえてさしつかえありません。

ここで重要な分岐点となるのは、システムアナリストの活動が、ITコンサルティング単独での受注なのか、システム設計・開発までを一貫して請け負っているのか、それとも単なる営業活動なのかという点です。

システムアナリストに類似した資格として、ITコーディネータという資格があります。ITコーディネータは半官半民の資格で、試験そのものは実はシステムアナリストに比べて非常に簡単ですが、必須研修受講に50万円ほどかかりますので、個人での資格取得は厳しいです。

ITコーディネータは、情報戦略の立案からシステム開発・運用まで一貫してサポートします。システムアナリストの職責が情報戦略の立案にとどまり、実際のシステム開発はプロジェクトマネージャやアプリケーションエンジニアに委ねられるのと対照的です。

対して、顧客企業は情報戦略策定のみをITコンサルタントに依頼し、実際のシステム開発は入札方式により最も安価で入札したベンダーに発注するケースが少なくありません。システムアナリストが、ITベンダーの社員である場合には、受注を念頭に置かねば企業人として失格ですから、営業モードとエンジニアモードの狭間で最適な着地点を見つける必要があります。


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